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実習

ダーウィン年や子どもの質問に接して、生命ということに思いをめぐらそうとしたら、まずいことに気が付いた。私の中にベーシックなものが薄い。

人間の付き合いは別として、他の生命に夢中になることがなかった。
こちらに来て、熱帯魚の一種だけど金魚に見えるのを4,5匹もらい、どんどん大きくなって喜んでいたら、3年目に次々死んでしまう。最後の一匹をクラインガルテンの人工池に放したけど、熱帯魚だからそれはまずかったと思う。

去年ジェニーからさやえんどうの種を貰いこっそり撒いた。園芸の知識は皆無だったから、種の袋の裏に書かれた説明を実行するしかなかった。それでも枝が伸びやがて豆がついて、それを「私が作ったのです」と自慢しながら近所にお配りするのを夢見ていた。1週間しても植えたところに変化がなかった。2週間目は忘れていたかもしれない。3週目ぐらいにはその辺に草が生えていた。さやえんどうの芽はこんなしょぼい雑草のようなものと違うはずだと思った。(何しろ見たことがない)雑草は抜いてしまわなければ。結局私の想像する黄金の芽らしいものは出なかった。自己分析すれば、どうしても育てたいという情熱に欠けていたから、正しい指導を求めることもなかった。

と、育てることにあまり縁のない生活だった。

たとえばあの人の話を思い出す。以前日本語を特訓で教えたドイツ女性は神奈川の農家に嫁いだ。何のことはない日本語のラブレターを書く手伝いをしたようなものだった。三世代同居の農家に嫁ぐことを誇りにして彼女は出発した。10年後に再会したとき、彼女は日本社会特に農家という環境に疲れ果てていた。しかし野菜の話になったら途端に目が輝き「うちの野菜は美味しいです」と園芸家に変身する。植物が好きで園芸専門学校に進み、外国で園芸実習をする国の奨学金を取って日本に行った人だ。日本での実習を受け入れてくれる初めの農家では、到着後3日目でお葬式が始まった。人々が出入りする中で日本語がわからずうろたえていた時、今のだんな様と出遭った。ドイツでエコ農業を学んだ人だった。

「それぞれの野菜に適した土が大事です。それから雑草がその土の栄養を横取りしたり、野菜の味を変えたりしないように一生懸命草取りをします。」「温暖化は困りました。冬にゴキブリなど野菜の害虫が死なないのです。そうするとこれまで必要のなかった薬が必要になります。農薬を使うようになると、野菜の品種をまた一から改良しなければなりません。そしてまた野菜の味が変ってしまうのです」と流暢な日本語で説明していた。

さらに「最近脱サラの人たちが野菜作りをして、いい加減な味のものを市場に出すので値崩れが起きるし、困ります」とも。

どうしてもこの味の野菜を食べてもらいたいという気持ちは、陶芸家だったらどうしても天目釉のこの調子に焼き上げたいと願うことに近いのではないかと想像した。それは各農家の個性ともなりえるのだろうか。

陶芸に関してはある程度の研究心がある。しかしその研究している姿を他人が見たら・・・(隣のブログのTaruさんが、ぼ~としている家業と書いているが)まさにぼんやりしているようにしか見えないだろう。スケジュール帳を埋めるのが有能な業種とは違うのである。で、ぼ~としている間に天命を待つのかお尻に火がつくのを待つのかは、企業秘密なので言えない。しかしお百姓さんのようにひたすら育てるということにも惹かれるから複雑な気持ちになってしまう。待ってはくれない季節の変化(時間)の中で、「今日やらなければ」という仕事に急き立てられる毎日であったならと思いつつそこまで仕事を生命として感じているだろうか。


しょうがないな~と考えながらこんな時は外に出る。玄関から5歩き、階段を1,5m分降りてクラインガルテンにたどり着く。



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流石に2月初めの夕方には人影はない。最近ガルテンの中で鳥のえさ台が流行っている。


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Lさんがこんなポスターを作業小屋に掲げたからだ。郷土の鳴く鳥とタイトルが付いている。

えさ箱に止まっていた鳥達は私の気配で皆逃げてしまった。おかしいな。この間はLさんが「・・・が来ている」と大声で教えてくれたときには、その声にもLさんや私がいても逃げなかったのに。





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仕方がないから風見鶏を映していたら


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おや!

何かいる。








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わっ、
これじゃヒッチコックだよ。


結局どうやって、美味しい野菜を作っているのかの話を聞くこともなく、探ることもなく逃げ帰ってきた。鳥を意識したら、周囲に何種類ものさえずりが聞こえていた。鳥の声が煩くて起きてしまう朝はもう直ぐかもしれない。
Commented by tomato at 2009-02-07 11:20 x
それが植物であっても動物であっても、
人はそれらと触れ合うことで、
人間の無知蒙昧さ愚かさを知り、同時に人間の素晴らしさを知るのでしょうね。

必ずしも、育てる必要はないと思います。
群れた鳥を見て、たくさんのさえずりに耳を貸すだけでも
自然の摂理を感じることはできます。

いえいえ、うおさんもtarutaruさんも、
ぼぉ~としながらも、
土に”命”をふきこむ仕事をされている。
これはとっても難しいことですよ・・・・

ドイツでも春は近付いてきているのでしょうか。
私の好きな歌を一句

”花の木は 割ってみても 花はなし 花は春の空に咲くらむ”

誰が作ったか知りませんし細かいところは違うかもしれません。
でも、割ったところで何も見つけられないのに、
桜の花は、ちゃんと春の空に咲くのですね・・・・
Commented by M野 at 2009-02-07 21:25 x
 実は趣味が園芸なのですが、ある時学生10人に対して花の種を蒔いてもらいました。発芽することが分かっている様々な花の種を選んでもらい、もちろん専用の土を用意して、実技指導もしてさて二週間後。なんと発芽に漕ぎ着けたのは半分。開花にこぎ着けれたのは一人。しかも工学部の学生だった!
 環境の問題もありますけど、園芸できない人がいるのは確かです。多方面に好奇心旺盛な人程、苦手なようです。以外と適しているのはズボラな人の様です。
 今年まく種の注文も終わり、春をまつばかりです。
Commented by tarutaru at 2009-02-07 22:40 x
キラキラとした春の光を感じるこの頃です。
行雲流水、白雲自去来。
そんな悟りなどとはとても程遠い心境にありながらも
刻々と変わっていく季節や時の流れにしばしば感動しています。
このポスター。野鳥の種類の多さにびっくりです。
きっと食糧事情がいいんでしょうね。


今日もぼぉ~っとして終わりました。
僕らの家業は、最初から何もないわけですから
ぼぉ~っとするしかありませんね。
下手をすると最後まで何もない?あはは
しかし、このぼぉ~っとがなかなか難しい。
実際は呆然のぼおに等しいですかねえ。
おまけに最近は見えるものまで見えなくなって来ています。
歳ですかね?メガネも鬱陶しい時があります。

生命の実感?朝日を見て感嘆し、夕日を見て涙する・・・
これでしょうか。
春を前にあれこれ思う今日この頃でした。


Commented by うお at 2009-02-09 17:23 x
Tomatoさん
先週末は展示会でしたので、返信遅くなりました。
そうですね。自然の摂理という巨大なメカニズムに驚きながらもその中から利用できるものをちゃんと見つけ出す人間の機能もすごいです。
展示に訪れた人々とお茶を飲みながら、日本茶、紅茶、コーヒーにしろ、そこら中の葉っぱを何でもいいからというのではなく、心を落ち着けるまたは眠気をさます成分を見つけ出しているね、などつい話題になりました。「チンパンジーはお茶飲まないよね」「いやわからないよ、お茶の葉をむしってばりばり食べてたかも」なんて付け加えながら。

土に命を吹き込んでいるのか、土から命を貰っているのかと思いながら陶土を通していろいろな感じというもの楽しんでいます。同じ土でも庭の土の扱いにおろおろするのも面白い。

う~ん、花咲じいさんは何処に居るのでしょう?冗談はさておき、なにか考えさせる歌ですね。教えていただきありがとうございます。
Commented by うお at 2009-02-09 17:47 x
M野さん
今年まく種の注文も終わり・・と園芸の余裕を感じる言葉で、もうそれだけで私なんか、芽が出るに違いないと思ってしまいます。それにしてもたったひとり開花にこぎつけた工学部の人はお見事。小学校の理科の時間だったか、植物について習い、グループで種まきしましたが、何にも出てこない植木鉢が窓辺にずらり並んでいた光景を思い出します。
展示会の訪問者から、父親が第2次大戦前ビオ農業をしていたとききました。当時シュタイナーの自然を読む考えに基づいてビオ農業が発生したそうです。つまりゲーテの流れですね。それはヒットラー政権下すべて廃止になったそうです。

それからヨハネス・ペータースさんにも会いましたが、あの水かけ火消し装置の蝋燭立ては、誰かが30回試して1回しか成功しなかったそうです。
Commented by うお at 2009-02-09 18:15 x
Taruさん
よい詩ですね。日本人現在まで漢字を使い続けていた文化に感謝したくなります。以前も話題になりましたが表意文字のすごさですね。
形作ることも視覚言語表現のはずですが、「あー、うー、かな~、もしかして、まあいいか・・・」とあやふやな言葉を重ねる自分にぼーぜんとしています。
最初から何もないわけですから・・・う~ん、そこをわきまえるべきですね。私もめがねを外してカメラの画面を覗き、初めて何があるかわかるという不思議な時間に突入しています。

四季という自然のめぐりのなかで、春は生命を思い出させる変化が音にも、空気にもあるようです。不思議なものだ・・・。
Commented by marumarusu2000 at 2009-02-13 09:42
芸術家はどれほどシンドイ職業でしょうか。
傍から見れば何もしてないようだけど、それは悶々とイメージを膨らませてる大事な時間。

父の、展覧会直前の様子、ボスの報告書締切直前の様子。
すごく似ています。
違うのは、被害が及ぶか及ばないか。(もちろん及ぶのは・・・)(゚m゚*)プッ
むしろ、お尻に火がつかなきゃできないんじゃないかと思うんです。
淡々とできる仕事ではないでしょう?

0から作り上げていく大変さ。レシピがあるわけでもなく・・・
敢えてそんな仕事を選んだうおさんやtarutaruさんはスゴイなと思います。あっ、妹もか?)゚0゚( ヒィィ

憧れるけど、私はできません。
憧れるけど、そんな人、間違っても旦那には選びません(笑)
ただ、気にはなる分野だし、何かしら携わっていたいなとは思います。
勉強すべきことが山積みです(_△_;
Commented by うお at 2009-02-14 07:56 x
タルナさん
元気のいいタルナさんのおしゃべりに接すると、なんだか力が出てくるな~。
もちろんタルナさんがお父様や妹さんを尊重して藝術や芸術家という言葉で表現することは正当なことと思います。が一般的な職業ジャンルとして芸術家を設けるのはどうかな??
だって、タルさん自分で思っているでしょ!そんな人をだんな様に選ばないって!!その職業の人はみんな婚期を逃すぞ~~。私やTaruさんが学生時代、やっぱり同級生の女の子が話していたよ。町内会で二十歳過ぎの娘が居るうちに必ずやってくる、お見合い斡旋おばさんがその子のうちにもきて「・・で何を勉強されていますか」「芸大で・・」そのおばさん写真も見せずに帰ってしまったとさ。

とりあえず私も今気になる分野なので何かしら手を出しています。

デモね・・・タルナさんの傍にはいつの間にか、お父様に似たような彼が・・・・。
Commented by marumarusu2000 at 2009-02-14 21:34
ヒー!! ノ)゚Д゚(ヽ
確かに、父親に似た男性に惹かれるって言いますよね。
いや、絶対に選ばないぞ!!
Commented by うお at 2009-02-15 05:37 x
ははは、これこれタルナさん、もう私は親子の間でおろおろしちゃいますよ。
だけどそれだけ、制作に関わる家族の姿、努力と苦労の連続として理解しているのね。大丈夫そんなことを知っているタルナさんはきっと素敵な人と出会いますよ。もちろん積極的な活動も必要よ!今日のチョコレート配りはうまくいったかな?
by kokouozumi | 2009-02-06 08:56 | Comments(10)

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