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150年前に

 1889年建設のベルリン博物館の中、世界中から集めた約3千点の物件が約3万平米の空間を埋めている。館内に立ち込める古い獣皮と除虫剤それにあのエタノールの匂いが。何かとんでもない事件現場か?それともこれから何か起こるのか・・・

 今年、2009年はチャールズ・ダーウィン生誕200年と彼の著書『種の起源』が世に出てから150年記念の年で、世界中なにかしらのダーウィンにちなんだ企画や催しがありそうですね。
ドイツではベルリン博物館の『ダーウィンン年』(2009年2月12日から)という展覧会が始まり、6月までの会期中多くのレクチャーもおこなわれます。
展覧会がオープンする2月12日はチャールズ・ダーウィンの誕生日。ここで陶芸関係者として外せない情報は、ダーウィンの母親がイギリスを代表するあの陶磁器会社、初代ウェッジウッドの娘だったということ。さらにダーウィンの奥さんもウェッジウッド2代目の娘、つまり従妹だったことです。だから何だ!と、陶芸関係者以外からは突っ込まれそうですが、この関連は近頃非常にタイムリーなニュースになってしまったのです。
ウェッジウッド社破産、数日後には10年ほど前からウェッジウッドの傘下にはいっていたドイツ・ローゼンタール社も破産宣告、それに『ダーウィン年』の紹介が先週は図らずも次々報道されたのでした。

 数年前、工業生産部門の工芸品アンビエンテをのぞいたとき、最上階にウェッジウッドとローゼンタールのみの独占ショールームがあり、そこから3階層下にはアジアからの出品者たちが失礼な表現ですが、まるで下町の茶店のようにひしめきあっていたのです。がそこに漲っている、世界の博覧会に参加したからって何なのよ!という素顔のパワーには恐るべきものがありました。そしてついに、あの時ヒエラルキーの最上階にいたウェッジウッドもローゼンタールもアジア産の安い陶磁器に太刀打ちできないことを理由に過去の存在になってしまいました。

 ヨーロッパの陶磁器産業について話し出したら次々面白い話になりそうですが、ダーウィンに戻ります。昨年一年がかりで『ダーウィン年』の準備をしていたベルリン博物館は進化論と生物変異に関する、世界で5本の指に入る研究機関なのだそうです。そこではどんな人々が働いているか?ある記事を見つけました。

 20年間、蜘蛛を調べている形態学者がいる。琥珀の化石などから発見されたものから現代までの蜘蛛を比較している。蜘蛛は昆虫の次に種類が多く、水の中から陸に上がった初めの動物でもある。今日の蜘蛛の肺は形成の上で、当時の物と殆ど同じ。しかしいまだに謎なのは、えら呼吸から肺呼吸への変化がどのようであったかで、それを知る手がかりとなるだろう、蜘蛛の祖先に関しては見つかっていない。「明日その標本が手に入るかもしれない」と、この研究者は希望を捨てない。






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 それから哺乳動物部門の主任は蝙蝠の研究者。現在動物の種類分けはDNAテストによるが、見かけの僅かな違いをメモするという退屈な作業はエコシステムのネットワークを理解するのに大事だという。「ダニか、ライオンか、はたまた蝙蝠か?。何が劇的な死滅といえるだろう。」(う~ん、わかりません←私)
田舎で育った彼は子供時代から蝙蝠に夢中で、巣箱までつくった。蝙蝠は昆虫を食べ、植物の受粉を引き受ける、エコシステムの中心的存在だという。現在は蝙蝠の習性から動物の社会性を研究している。哺乳類のなかで最も英雄的な雄はシマウマでもヌーでも水牛でもない。ヨーロッパでは100匹の雌蝙蝠がお産する場所を探す。また安心な環境と親戚付き合いが大事なようで、10年以上を経過しても自分の古巣へと戻ろうとする。血族同士で食物源の場所を密かに伝えていく。閉じられた社会の連帯の原則。が融通性に欠け、彼らのエリアが破壊されると、変わりの場所で他のグループと揉め事をおこす。
しかしこのようにたとえば6種ぐらいの機能が理解できたとしても、他の百万種に関してはわからないから、後にも先にも人は少しづつ向上しながら混乱するばかり。

 最後に博物館館長。生物学における進化の究明は、古代生物学、分子生物学、形態学、それに遺伝子分析などの様々な方法がとられている。が自然を好きなように考えているわけではない。たとえば蛸が脳から食物を摂取することが自然淘汰の優位性の結果であるかどうかまだ誰もわからない。
又最近多く話題にされるのは、どの時代の種が地球規模の気候変動と環境破壊に感応したかだ。しかし人間も生物学的に見れば動物の一種であるという話は誰も聞きたがらない。

 ラジオの『ダーウィン年』紹介では、「ダーウィンが考えていたことは、150年後の現在でも95%が正しいとされ、いまだに生物学の核となっている」と説明していました。この展覧会のために集められたナフタリンやエタノールの匂いを発する3000点の死んだものは、その生きたときが劇的だったにせよ、つまらなかったにせよ、『ダーウィン年』という誇らしい舞台の上で、過去と未来のドラマを演じようとしています。

 人間社会が積み重ねてきたことで、雁字搦めになってしまったと思える今年というときに、『ダーウィン年』の展覧会を見学するのは良いかもしれません。





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Commented by tomato at 2009-01-24 08:51 x
私もダーウィンの「種の起源」には興味があります。
男の子ですから~(笑)

んでもって、その興味が高じて、
アメリカ在住中に、なんとガラパゴス諸島まで行ってしまいました。
飛行機を三回も乗り継いで、二日がかりで到着です・・・・
ゾウガメやイグアナ、ペンギン、フィンチなど
彼が当時驚嘆した生態系に私も触れてきました。
ダーウィンほどの感激は無かったかもしれませんが、
とても良かったことを記憶しております・・・・

「ダーウィン」年ですか。日本ではやるのかなあ・・・・
Commented by うお at 2009-01-25 09:16 x
Tomato少年は昆虫採集とか夢中になったのでしょうか?ガラパゴスまで行ってしまうとはかなりの熱意ですね。(笑)


Tomatoさんの植物や樹木の写真にほっとさせられるのはその辺にあるのかな。

私は小学校のとき「蜘蛛の研究」を夏休みの宿題でやった事がありましたが、大嫌いな蜘蛛にすこしでも親しみをもてるかなと、ダーウィンには程遠い理由でした。結果的にその後クラスメートが蜘蛛を見つけると私のところに持ってきて、ますます「きゃ~~~」
Commented by tarutaru at 2009-01-25 12:13 x
ふ~ん。ベルリン博物館内の「古い獣皮と除虫剤それにあのエタノールの匂い」・・・・どんな臭いなんでしょうね。二日酔いで加齢臭放つオジサンのそれとは違うような気もします。

tomatoさんだって200年前に生まれてたら「tomatoの進化論」を発表してたかもしれませんよ。夏休みの研究でね?
しかし、tomatoさんの好奇心もさることながらいろいろなゲテモノに嵌ってしまう学者が大勢いるものですね。研究なんてやっぱり人の歩いた後を追いかけてもなかなか見えてこないものなのか、ユニークな発想力が要求されるんでしょうか。聞いてびっくりです。

それにしても、ダーウィンとウェッジウッドの繋がりはまたびっくりです。
もしかして「ウッド」でもタイガーウッズは関係ありませんよね?まさか。
Commented by M野 at 2009-01-25 23:45 x
 うーん、やっぱり当時の学者は金持ちなのか。ダーウインといえば本当に苦労して探検隊に潜り込んだという逸話がありますが。
 進化論で説明出来ないのは、ある時期に生命が大量に発生したと言う事件がありまして、これが5%なんです。
 エコシステムと形態の違いなのですが、私の知る範囲では環境によって、同じ植物でも大きさが変わった変種になることがあります。この場合遺伝子のわずかな違いしか無いのですが、全く違う植物に見えるのです。
 極端なことを言えば、人間の遺伝子とゴリラの遺伝子は5%だったかしか違わないし、植物のイネと人間の遺伝子は65%一致する!だから形態の記述が重要なのですよ。
 その上で、その大量発生から生き残った生物から進化して発展した生命には、この地球上でなんらかの役割りがあるのでは無いのか、と今考えられているのです。
 そこでなにが劇的な死滅か、という悲観的なコメントになったのかと思われます。ただこの仏教的な考えに、先端の生命科学が近付いてゆくのに、不思議を感じます。
Commented by M野 at 2009-01-25 23:49 x
 追伸
 今使っている茶碗はベトナム製なのですが、向こうで使っている器らしく、すごく轆轤だけうまくて、焼き過ぎの薬も最低なのですが良いあじを出しています。でも100円ショップのベトナムは、企画ものの悪さで、作っている人が楽しめないのかなんかつまらない感じです。あの安南の伸びやかさやテクニックが無いのが嫌です。
 それらがウエッジウッドを駆逐したとすれば、何が悪いんだろうと考えてしまいます。
 さて博物館ですが、学名で読めるものを探してゆくと思いがけない発見がありますよ。特にバンクスとロスチィルディがいくつあるか、面白いですよ。当時の最大のスポンサーですから。
Commented by うお at 2009-01-26 06:43 x
Taruさん
学校の理科室のにおいを覚えていませんか。私はいつも「何がおこったのかな」と、思ってしまいました。現場を押さえることはなかったですが。エタノールは飲まないほうがいいです。

自然科学など学者さんの話は時に、推理小説より面白かったりしますね。クリエイティブな仕事は色々な形で存在するようです。

タイガーウッド?陶芸家ですか?何人かな~。
Commented by うお at 2009-01-26 07:21 x
M野さん
いつもながら簡単にまとめられながら非常に参考になるフォロー書き込みありがとうございます。
今回裏付けを取らなかった部分がよくわかりました。どうりでご飯が好きだと思った!(冗談ですが) 
私はこの分野そんなに知っているわけではありませんが、なぜ生き残りなぜ死に絶えてしまうのかの追求は哲学者、宗教者から最先端化学へと解釈の解き手が移行しているような。まさに高僧と呼ばれるような研究者もいたりですね。とても面白いです。
Commented by うお at 2009-01-26 07:52 x
M野さん 追返信です。
ヨーロッパの磁器産業は東洋の磁器を求めていっせいに発生した感がありますが、知名度の高い各社とも、発生当時から経営が大変だったようです。今に始まったことではないともいえて、「アジア産の安価な・・・」と罪をそこに擦り付けるのはどうかな?と思っていました。

よく見かけるようになったベトナムの安南手がつまらなくなったのは、残念です。これも言い出したら止まらなくなりそうです。

学名にスポンサー名をいれて、学者さんたちも必死ですね。環境関連の研究を維持するにも、その研究所にスポンサーを説得する論の立つ所長がいるかどうかに関わると聞いたことがあります。

今年は博物館が楽しみの一つになるかな。




Commented by うお at 2009-01-26 21:58 x
M野さん 訂正です
先の私のコメントに、最先端化学と書いてしまいましたが
最先端科学に訂正します。
Commented by onoman at 2009-01-27 15:12 x
それにしてもいろいろご存知ですね。
博物館は博学の度合いが高いほど興味深くなるものだと思います。
以前イギリスで科学博物館に行ったことがあるのですが、その膨大な資料の中で(もちろん恐竜も・・・)目が回ってしまったことを覚えています。鉱物のコーナーに一番興味を引かれました。
宝石に人の心が動かされるのがよくわかりました。とにかくきれいでした。いろいろな研究者も集めだすときりがなく、面白いものなんでしょう
ね。私自身は血液型のせいか(と逃げる・・・)一つのものに突っ込んでいけません。いつも、「ヘーぇ・・そうなんだ」で終わってしまいます。
なんとかしなくては・・・。
Commented by うお at 2009-01-28 08:22 x
Onomanさん
いろいろなことにミーハーなだけですよ。
イギリスの博物館はいってみたいです。ダーウィンも学校をサボって大英博物館にばかり居たということです。王立協会という組織が現在まで科学分野に貢献しているようですから、科学博物館はすごいだろうと想像できます。

私は出光美術館の陶片コレクションが好きでした。中国景徳鎮の磁器片は本当に美しく、これに世界中の人が魅せられたのかと・・・当時、宝石や金の代わりに欲しがられたことを、納得したものです。

しかし、知らないことが多いですね。
Commented by onoman at 2009-01-28 09:16 x
訂正
行ったのは、ロンドンの科学博物館ではなく、自然史博物館でした。
Commented by glueck at 2009-01-28 18:17 x
Kokoさん、いつも色々な方向にアンテナが張られていて関心します。
フランクフルトでもダーウィン関連の展示やっていますので、
是非上京?して下さい。
http://www.schirn-kunsthalle.de/index.php?do=exhibitions_detail&id=88&lang=de

余談ですが、このSchirn美術館併設のカフェには
サルサナイトがあります。
Commented by うお at 2009-01-29 06:25 x
Onomanさん
私の返信コメントもあやふやな表現で御免なさい。
ベルリン博物館に関しても、自然博物館または自然史博物館と書くべきだったのですが、辞書ではNaturkundeが博物学だったり、理科と出ているものもありました。それに東京の科学博物館は自然史博物の分野もあるし・・・科学博物館とすべきかとも思いますよね。

ロンドンの自然史博物館は大英博物館から枝分かれしたこと、確認しました。ありがとう!
Commented by うお at 2009-01-29 07:17 x
glueck さ~ん、
インフォメーションありがとう。
早速検索したら、その他に次々とダーウィン年に関する企画が並んでいてびっくりです。ベルリンが終わると秋にはシュトットガルトの博物館でも始まるし、もちろんロンドンの自然史博物館でも。

下記は先のベルリン博物館館長のブログです。もし興味ありましたら、今年中どんな展開になるか、どうぞご覧ください。

achdulieberdarwin.blogspot

アンモナイトではなくサルサナイト!ダーウィン関連で一瞬お猿さんの夕べかと思いました!おっ、もしかしたらそこでglueck さんも・・・・
by kokouozumi | 2009-01-23 08:01 | Comments(15)

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by kokouozumi