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言葉をなくした日

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クリスマスがすぎ、この一年を振り返ってみようかと思っていた矢先の27日、ガザのニュースが飛び込んできました。今日明日のことから離れて・・・と頭が一瞬空っぽになった状態に聞こえてきたニュースなので妙に入ってきてしまいます。
第二次大戦直後のイスラエル独立に対するアラブ諸国の対立で起こった第一次中東戦争から第5次なのか第6次なのか良くわかりませんが、イスラエルが「カッサムをさらに打ち込むならショアーが起こるぞ!」といえば、ハマースは「イスラエルは新ナチスだ!」と、兄弟喧嘩のように滑稽なと世界中から冷笑されていても、人が次々死んでいく。

ドイツに長く住んでいると外国人の身でも、いつかユダヤ民族の問題に対面することになってきます。2年前は戦後60年ということで、テレビ番組、新聞記事の特集記事、さらに映画と関連する情報が矢継ぎ早に報道された感があります。スピルバーグの映画「ミュンヘン」が封切られたのもその一連の流れの中でした。

私がユダヤ人問題などのニュースに敏感になった切っ掛けはしかし日本を舞台にした事柄からでした。

私の住むフライブルク市は人口30万の中型都市で、世界中のその規模の都市と姉妹都市提携をしています。日本では松山市との交流があり、2000年前後に数年間、松山市紹介の事務所がこの町に開設されていました。私はお手伝い要因として一時その事務所に座っていたことがあります。ある時、「祖父が松山に居ました」と尋ねてきたドイツ人と話をしました。日本とドイツが一回だけ敵・味方に分かれて戦ったチンタオ(青島)海戦のドイツ軍俘虜(捕虜と同じ意味)は日本の数箇所の収容所に滞在していた。(兵士達の多くは第一次大戦でフランス内での捕虜経験もあったが、日本での待遇は桁違いに良好で収容というより滞在のほうが適していたという)
正直な話、私はフライブルク来てこの松山センターに座るまで、そのような1914年のチンタオ海戦のことも、日本中にドイツ軍俘虜収容所があったことも知らなかったのです。センターには松山からの交換留学生も良く出入りしていて、ドイツ文学担当教授が松山収容所で発行されていたドイツ語の鬚文字新聞を研究しているといった、そのことに関する情報が一挙に流れ込んできました。収容所近辺の日本人にとって初めて身近に接する西欧人には見知らぬ文化に対する興味から、捕虜というよりカルチャー教師のような親しみと尊敬にちかい接し方をしていたようです。したがって帰国が許されても日本にそのまま残ったり、一端帰国してから戻ってきたドイツ人もいたということです。

そんな話の中で私が関連して唯一思い出したものは漫画でした。手塚治虫の「アドルフに告ぐ」は三人のアドルフが描かれていましたが、アドルフ・ヒットラーと神戸のドイツ人町に住んでいる領事館員の息子アドルフ・カウフマンとユダヤ人居住区に住むパン屋の息子アドルフ・カミルです。

ドイツ人俘虜収容所の話を知って、私は手塚漫画のストリー背景として描かれている神戸のドイツ人町が発生したのは、この日本に残留したドイツ人たちだったのか?その中にどのような経緯でユダヤ人が混在していったのか?と、歴史と漫画が交差するミーハーな疑問からユダヤ人の存在を改めて意識したのです。気にしてみると日本のドイツ人俘虜収容所に関する記録は多く、拾い読みしてみると、菓子のユーハイムや東京のローマイヤーというドイツレストランの発生に関わるドイツ人たちの名前も名簿に残されています。

「アドルフに告ぐ」はもちろんフィクションですが、ゾルゲなどの名が実名で登場し、背景のことが史実と比較できます。神戸で幼馴染として育った二人のアドルフ、日本人ドイツ人の混血カウフマンとユダヤ人のカミルはやがてイスラエル建国の地で再会することになります。

一年を振り返ることもなく、何かそんなことを思い出している今年の大晦日です。
Commented by tomato at 2008-12-31 20:57 x
海外の難破船の乗組員を救助したり、
過去の日本人の評価は高いですね。
サムライもその一つです・・・・

ただ、今の日本人には頭の痛い話です。
文明が発達すると、どうしても自分のことしか考えないんだなあ。
しょうがないと言えばしょうがないんですけど・・・・

第二次世界大戦で同じ敗戦国ということで、
日本人の多くはドイツ人に親近感を持っていますね。
法律を守るところとか勤勉さとか似ているし・・・・

うおさんは、そんなドイツと日本の架け橋を担っておられるのですね。
ドイツでの新年のお話、聞かせてくださいね。

よいお年を迎えられますことお祈りしております・・・・
Commented by うお at 2009-01-01 22:44 x
Tomatoさん、新年おめでとうございます。年を越しての返信にて失礼いたします。

ドイツと日本の架け橋 → もうコロッケ大使と呼んで下さい。いつだったかの31日に近所隣が集まる年越し会合にうっかりコロッケなぞ作っていったら、すごい人気でみんな止みつきになってしまって、私は毎年作ることになって・・・。

世界のニュースはその国の地理的な条件だけでも、ニュースが遠く聞こえたりします。それに国際間のその国の立場がニュースを大きくも、小さくも伝えます。ある外国の地で起こる争いに関して、私のように思いがけない切っ掛けで正確に知りたいと思えることを昨年末、大急ぎで書いてみました。

Tomatoさんもよい新年をお迎えになっていることと、想像いたします。
今年も宜しくお願いいたします。
Commented by 河西文彦 at 2009-01-31 06:02 x
青島ビール も有名ですし、日本軍が(空軍)パラシュートで降下した
占領も有名です。戦争オタク と間違われても 心外ですので、単純にいつも心に残る「疑問」を呈しておきます。3000年にも及ぶ、ユダヤ人への迫害、インド カースト  とも 韓国 日本の 部落民
(白丁)とも違う「迫害」て  何でしょうね。???
なぜ 相変わらず  続くのですかね、、、
Commented by うお at 2009-01-31 09:53 x
青島ビール有名ですね。白状すると私が先に知っていたのは実はビール・・・。手塚治虫が「アドルフに告ぐ」を描いたのは小松左京の「日本沈没」(日本人はユダヤ人のように流浪の民になれるか)という問いに対する答えだったと解説にありました。イスラエルとパレスチナの問題はもともとの起こりが他国の介入だったり、双方の宗教観やイデオロギーの違いだけではなくて、今は憎しみだけじゃないかと思えたり、複雑でわからないです。おっしゃるとおりユダヤ人が長い間「迫害」されていた歴史といまの紛争が一続きに見えてこないです。なぜと思いながらニュースを耳にしています。
by kokouozumi | 2008-12-30 09:50 | Comments(4)

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