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ノート






ノートやメモが、もはや紙の上のことではないようなのが、昨今の生活変化の1つと言える。スマホ1つあれば、ノートやメモが無くても自分のせつな的感覚を確認することが出来る・・・ともいえる。いまや陶芸教室にやって来る参加者たちは、スマホの画面を見せて、この写真がモチーフである、というような具合で制作会議が進行する。

しかし、記憶を辿る手段として紙の世界はまだ有効なようだ。デジタルモバイルにすっかり馴染んでいるような世代、当然電子書籍を利用している若者からも、何処に何が書かれていたかの記憶は、本のボリュームで(何ページぐらいに)書かれていた内容を覚えているが、電子書籍ではそのように記憶することが出来ないと、聞いたことがある。
確かに、今手元にある既に読んだ本の内容に関しては、曖昧な記憶でも、だいたいの検討で後追いすることができるから優れている。この優れているという言葉を、紙の本に関してなのか、人の記憶力に対して言うべきなのか、よく分からない。

10年前に読んだ本の内容を、何処に何がと、かすかに覚えているかもしれないのに、自分が書いたデジタルメモに関しては、五里霧中のごとく記憶は消え去ってしまう。このブログは2007年9月からこれまでの7年間、私のメモになっている。幾つのメモを残したか、はっきり数えたことは無いが、月平均3件として250前後と非常に少ない数なのに、すっかり忘れている内容が多く、偶然に昔のものを読んで、思いがけない記録を見つけることもある。 余談だが、かつて寛太工房のあったへーリンゲン村メモでは、猫の名前以外に人間の固有名詞は全く出てこないのに、牛舎のエミールという実名が、雪景色に埋もれるようにして書きこまれていた。そのエミールの元から現在の猫たち、メリーとジェーンはやって来た。その場所に生まれてからどれだけミルクを飲んで育ったのか知らないが、ミルクが大好きで、外で遊んでいようが、家の中の何処にいようが、ミルク!と一言叫ぶだけで脱兎のごとく台所に駆けつける彼女達である。

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取り留めの無い話になってきたが、デジタルメモ以前には、メモ用ノートを選ぶというのが楽しみでもあった。字が下手だから高価な有名万年筆を物色するなど、はなから無駄とあきらめていたものの、用も無いのに文具屋にふらふら入っては、並んでいるノートを端から端まで一応確認したものだ。これはドイツに来る前90年代のことで、バブル景気は文具類にも浸透していた。モレスキン(現在のイタリア製ではなく)のような革表紙を持つ高級品は万年筆と同じ理由で、選択外。それから背がコイルで閉じられているノートも左ページに書きづらい、大学ノートはあまりにもノスタルジックな感じがするばかりか、いかにも陰ながら勉学に励んでいるようで、いい加減なメモに使えない・・・さらに紙の色が白すぎるとか黄色すぎるとか、罫線の色が目立ちすぎるとか、棚の前を移動しながら自分勝手に文句を並べているのだが、あの楽しみってもしかしたら、とても日本的なことだったのではないか?と、ドイツに来てからしみじみ懐かしく思い出したものだ。こちらのノート文化は上下にくっきり分かれ、しかも上には堅物が並び、私のようにいい加減なところで選択すべきものの種類が極めて少ない。

と、いうことでドイツに来る直前の頃、気に入って何冊も買い込んだのがこのノート。

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三菱ペンシルがスコットランドのキンロック・アンダーソン社(タータンチェックの洋服を作っているらしい)と提携して生まれたノートということで、赤系、青系そしてこの白・緑系の三種があった。数年前日本へ帰国した際、問い合わせたらもうこのノートは製造していないと分かった。ドイツに暮らしていると10年前に購入した商品でも、まだ製造されていると思い込んでしまうのだが。



文具屋でノートを物色する楽しみが薄れたのなら、目的のみに焦点を合わせて、自分で作ってしまえ・・という時期があった。バック(多分当時持っていたもの)に入る大きさで、バックの中にその他の物が雑多に放り込まれていても、ぐしゃぐしゃにならないためと、手に持って書きやすいように、裏面表紙には厚手のボール紙を綴じこんだ。メモを取るより、いろいろなものを貼り付けていたノート。


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あの頃は、陶芸に関する情報をメモするだけが目的で数冊の粗末なノートはなんとなく完結性がある。その延長線上に現在の制作ノートがあり、陶芸に関すること、というおおらかな目的より、注文制作メモで、これがないと追加注文があったときパニックになる。仕事が終わると疲れ切って、書き込まないでしまうから、仕事途中に泥だらけの手で開く、汚れが一杯のノート。
by kokouozumi | 2014-11-16 07:24 | 陶芸 | Comments(0)

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