所有者または所有物の記憶
2013年 03月 09日
冬の間、私がアトリエで留守番の夜に、 パンクはPCの熱を暖房代わりにしていた。
熱を出して寝込む、1週間仕事にならないという、私としては近年稀にみる重病状態から、なんとか脱却して仕事場へ復帰した日は、これまで長く、長く居座っていた冬の陽差しから、春らしい暖かな光へと変化した第一日目でもありました。しかしながら私は自分の回復具合に半信半疑で、首をマフラーの中に深く縮めたままアトリエ到着。久々の私を箪笥の上からさかさまに見つめていたパンクは、やがて大きく伸びをしながら、外へ出て行きました。
出入りに関して、パンクには妙な癖があります。どこかの窓が開いている場合はそこから自由に出て行くのですが、帰宅(といえるなら)は必ず表通りに面した窓枠に飛び乗り、その窓を開けてもらうまで待つ。さっき出ていった空いている窓から帰ってくればいいものを、閉まっているのにいつも同じ窓から帰宅したがるのは、何のつもりなのか?もうこれはパンクと共存する人間にとっても従わざるをえない猫儀式です。ときどき中の人間が仕事から目が離せず、なかなか窓を開けてもらえない場合は、窓枠に座り込んでじっと待っている。反対側、中庭に面したほうの窓の内側には作品見本などあぶないものがごちゃごちゃ並び、窯というスイッチが入っている時は危険地帯もある。そちらからの出入りでは、『パンク、ダメ!』と大声で怒鳴られることがよくあったので、嫌になったのか?猫はしかし、怒られたことをそれほど几帳面に記憶しているだろうか?
さらに面倒なのは、表側の窓枠に乗っても、それを発見した人間がわざわざ仕事の手を止めて窓を開けても、入りたいわけではない・・・という、パンク複雑な心境というのもあります。そんな時は大抵、耳をイカ耳にしてる。イカ耳・・・これは猫を飼っている人なら良く知っていると思いますが、耳をやや後ろ向きに横へ突き出した形です。
話は振り出しに戻るのですが、復帰一日目の私は、なんとなく、ぼんやりとしまりの無い仕事ぶり。横でパンクは出たり入ったりしているうちに、午後になりました。次に帰ってきたパンクは窓枠でイカ耳状態。普段なら『ほっておけ』ということになるのですが、病み上がりの私は、仕事に乗れず、パンクのイカ耳の訳でも聞いてみようかと、窓辺に。するとパンクは私を誘っているようです。こんな日は付き合ってみようと、外に出たら、パンクは張り切って、まず鼠狩りダンス。それから一目散に道路を渡って向かい側に走ります。これも飼い主としての独断と偏見の観察による判断ですが、猫はひとり自由に動きたい場合は、ちょっと目を離した隙に飼い主のまえから忽然と姿を消してしまいます。見事に居なくなります。飼い主に見える状況で何かやっているということは、『一緒に遊ぼう』と、誘いのジェスチャーです。この日も私の視線に入る位置で、向かい側の壁をひっかくジェスチャーです。今日は猫と遊ぶぐらいしか脳のない私は、誘いに乗ってふらふらと向かい側のパンクが引っかいている場所に行ってみました。すると、『まあ、暖かい!』午後一番の光でぽかぽか温まっている向かい側の壁の前に、パンクと一緒にしゃがみこんでしまいました。思わず『有難う、快気祝いに暖かい場所を教えてくれたのね』とパンクに話しかけると、話が判っているのかいないのか、壊れた胡桃の殻を転がし、次に王冠と次々路上のごみを追いかけて、私の前を飛び跳ねながら往復しています。
以前、クリーブランド・エーモリー氏の『クリスマスにやって来た猫』を読んでいたのは、ロック捜索に向かう電車の中でしたが、今全く違う状況の中で、その本の冒頭に書かれていた言葉を思い出します。
☆ロック・小次郎 ポスターになる
:-猫の所有物だったことのある人間は、それがどんなに些細なことであっても、猫と共有した経験を、一生覚えているだろう。-:
エーモリー氏にとって、その些細な思い出の始まりが、猫と遭遇した時でした。
この日、アトリエの向かい側というだけで、特別に美しくもなんでもない路上の一隅に猫と一緒にしゃがみこんでいたことは、他人が見たら、猫はともかくそのような人間の正気が疑われる行動かもしれませんが、午後の暖かな一瞬を 私は忘れないでいるでしょう。
・・・ただし!私が猫の所有物かどうかは、まだちょっと受け入れられない話ですが。
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Aya
at 2013-03-15 02:46
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お久しぶりです。
体大丈夫ですか? 今年の風邪は酷いみたいで私の会社でも結構はやりました。去年からインフルエンザ予防注射の日が会社であって仕事場でできるので便利になりましたが、電車・地下鉄とか使っているとどうしても風邪は避けられない気がします。
パンクかわいい♪
私の実家の猫も入れろと窓をがりがりしますよ。網戸はもうぐちゃぐちゃになってます。その度母がドアを開けて入れているので本当に何様だ?ってよく思います。で、食べてまた出て行きたがるし。猫って気ままですね。
体大丈夫ですか? 今年の風邪は酷いみたいで私の会社でも結構はやりました。去年からインフルエンザ予防注射の日が会社であって仕事場でできるので便利になりましたが、電車・地下鉄とか使っているとどうしても風邪は避けられない気がします。
パンクかわいい♪
私の実家の猫も入れろと窓をがりがりしますよ。網戸はもうぐちゃぐちゃになってます。その度母がドアを開けて入れているので本当に何様だ?ってよく思います。で、食べてまた出て行きたがるし。猫って気ままですね。
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うお
at 2013-03-15 07:27
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Ayaちゃん、こんばんは
会社で予防接種は良いね。私は寝込んで3日目にお医者へいって、直る注射お願いします、とお願いしたのですが、お茶をがぶがぶ飲んで寝てなさいと、お医者さんの答えでした。
それから、寒い墓地に長時間たたずんでいたことより、周りに病気の人が一杯居たのですよ、とのお医者の感想でした。病原菌の飛来が怖いようで電車の中はほんと危ないね。
実家のトラちゃん、網戸ぐしゃぐしゃにしましたか。パンクは窓下の壁を泥んこ足で汚し、大家さんににらまれています。エーモリー氏の猫の話は面白いよ。『北極熊という名の猫』のタイトルで出ている続編を探しています。
寝込んでいる間、たまたま手に入れた『赤毛のアン』の朗読テープを聴いていました。プリンス・エドワード島の風景が心地よかったよ。Ayaちゃんは行ったよね。
会社で予防接種は良いね。私は寝込んで3日目にお医者へいって、直る注射お願いします、とお願いしたのですが、お茶をがぶがぶ飲んで寝てなさいと、お医者さんの答えでした。
それから、寒い墓地に長時間たたずんでいたことより、周りに病気の人が一杯居たのですよ、とのお医者の感想でした。病原菌の飛来が怖いようで電車の中はほんと危ないね。
実家のトラちゃん、網戸ぐしゃぐしゃにしましたか。パンクは窓下の壁を泥んこ足で汚し、大家さんににらまれています。エーモリー氏の猫の話は面白いよ。『北極熊という名の猫』のタイトルで出ている続編を探しています。
寝込んでいる間、たまたま手に入れた『赤毛のアン』の朗読テープを聴いていました。プリンス・エドワード島の風景が心地よかったよ。Ayaちゃんは行ったよね。
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エアフルトの銀杏
at 2013-07-02 02:09
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ひさしぶりです、おげんきですか?
元気にご活躍のご様子でなによりです。
元気にご活躍のご様子でなによりです。
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うお
at 2013-07-03 14:29
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エアフルトの銀杏 さん
ありがとう~~。銀杏さんもお元気ですか?
それほど活躍はしていませんが、こちら元気にしています。
先の日曜日は日本人会の夏祭りでした。
陶製の風鈴作りワークショップをやりました。30個ぐらいと数が少なかったですが、全部なくなりました。
銀杏さんはどうしているかなあ、とときどき噂しています。なかなかそちら方面に遊びに行けませんが、またお目にかかれるといいですね。
またこのブログにもお声をお聞かせください。
ありがとう~~。銀杏さんもお元気ですか?
それほど活躍はしていませんが、こちら元気にしています。
先の日曜日は日本人会の夏祭りでした。
陶製の風鈴作りワークショップをやりました。30個ぐらいと数が少なかったですが、全部なくなりました。
銀杏さんはどうしているかなあ、とときどき噂しています。なかなかそちら方面に遊びに行けませんが、またお目にかかれるといいですね。
またこのブログにもお声をお聞かせください。
by kokouozumi
| 2013-03-09 19:03
| 猫
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