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Mundenhof   ムンデンホフ











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ムンデンホフの入り口にはこんな木のアーチがポツンと立っています。中に入っていくと通路にそった低めのフェンスの向こうは、広々とした草原。この場所を知っている人は、遠くに点在するものを、既に見つけることができます。「駱駝さん!今日はこっち側に居る。その向こう、ポニーたちの草むらには野うさぎも駆け回っているはず。」
ムンデンホフは38ヘクタールの動物公園。正確には昔の農村で、使役のために飼われていた動物を集めた場所で市の園芸局が管理しています。

昔々はある修道院が13世紀末から約500年間、利用していた土地です。ホフ(Hof)は「中庭」のほかに「農園、農家、荘園」の意味もあり、ムンデン(munden)は美味しい、口に合うという現在は殆ど使われていない動詞です。質素に違いない修道院の食料調達の農園にこの名前がついた・・・なるほど。

ムンデンホフに隣接する120ヘクタールの草原と耕地にはスコットランド産の牛が放牧されています。ムンデンホフの動物たちの餌もそこから調達されます。放牧場から更に続くのは180ヘクタールの自然保護区、その奥の森林地帯と共に森林局の管轄です。扇状に広がる自然保護区の右端にムンデンホフがくっ付いているとすると、反対側の左端には70ヘクタールのエコロジー開発団地、リーゼルフェルトがあります。

また言葉の説明になりますが、リーゼルフェルト(Rieselfeld)とは下水灌漑利用農耕地を意味します。1790年から1890年の100年間でフライブルクの人口は5倍に増加して、従来の街中を流れる用水路では下水処理が間に合わなくなり、考えられた手段がリーゼルフェルトで、その場所が現在のムンデンホフと自然保護区それに開発団地となった土地でした。(草刈のところで書いた、生ゴミ回収も1887年に始まった、最初のゴミ処理政策です。)しかしながら団地の名前にそのまま「下水灌漑利用農耕地」とつけてしまうところが面白い。普通「緑ヶ丘」とか「うつくし野」とかになりますよね。Rieselfeldという言葉も、もしかしたら既に意味を失っているのかな。リーゼルフェルトはビオロギーな農耕地として特に二つの大戦中は重要な食料源として機能していました。しかし戦後1960年代になると、下水には農耕利用に適さない有害物質が含まれるようになりました。そして下水浄化処理場が新たに設備されることになります。下水灌漑利用地は徐々に減っていき、1985年には完全に終了しました。

リーゼルフェルトの中にあって、ムンデンホフは酪農に利用されてきました。それと関連付けての発想か?下水処理移行期、1960年代の市長は「あそこは動物園にしよう!」と発案、さらに動物を集めたり、世話するには動物愛好家の援助が必要と、企業中心の助成団体も立ち上げました。この団体は現在も、公園内の動物居住状況の改善に、大きな力となっています。しかし一時集められた猛獣たちは、今は見ることができません。檻の中の動物は、その種の生態にふさわしくないと、自然派志向のフライブルクには合わなかったようです。そして家畜動物公園という方針になっていきました。専門的には
突然変異や掛け合わせによって、発生した家畜の種族の中にも、現在絶滅の危機があるそうで、その種を残すという目的があるようです。

私の住まいから自転車で10分の距離なので、10年の間に何度もムンデンホフを訪れています。入場料なし、年中無休、開館時間の制限なしと全くオープンなので、気が向いたらパンとコーヒーを抱えて、朝食を食べに行くこともできます。そのように利用しながら年月を重ねて、ムンデンホフが完成されていくのを知っていますが、それは設備がどんどん増えるというより、逆にその土地の広がり、更には隣接する放牧地や自然保護区の景観をどんどん取り込んで、その場所が昔から農耕地だったことを感じさせられるといった印象です。

フライブルク市は環境都市として知名度があります。現職市長はドイツ初の緑の党所属でした。だからではなく、何代も前の市長から受け継がれてきた都市計画のコンセプトが何十年もの歳月をかけてこの町の環境を作ってきたことが、このムンデンホフの歴史からも読み取れます。そこでは紛れもなく、人々が自然を感じ、動物が暮らしているのを目にし、触れ合うことができます。フライブルクの環境哲学がそこにあるようです。


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動物たちの様子は次回に続きます。
Commented by tarutaru at 2010-06-21 09:41 x
ムンデンホフ・・・人の数より動物の方が多い処といった牧歌的な感じですね。日本にも北海道や東北辺りにもあるかな。
環境哲学と言えばドイツらしいかなと。日本はどうかというとトキが絶滅してもなお税金使って隣の中国から持ってきて大騒ぎしてみたり動物園の客寄せパンダとしての扱いだったり。思いすごしかもしれませんが動物たちには最適な環境とは言えなさそうです。

家畜はもともと人の暮らしの中にあって人とともに働き手だった。機械化によってその職を奪われたという歴史なのでしょうか
日本の宮崎は今(たぶんこれ以上、広がらないと願っていますが)口蹄疫の騒ぎです。20万頭を超える殺処分でまだ警戒が必要な状況、消毒のために大量散布の石灰が住民の健康被害に。食品業界にも影響が出てきてるとの話も。逆説的ではあるけれども人と動物と自然の関係が目に見える形で現れています。
Commented by M野 at 2010-06-21 21:10 x
合計408ヘクタール、大体2キロ×2、04キロぐらいでしょうか。なんだろこの感覚。一つのシステムが結果としてこの大きさになったのでしょうが、にしても広いです。
盛岡にも同様な元牧場が郊外にあります。市営子鹿牧場というのですが、昔はほんとに牧場だったのですが現在ではふれあう動物も無く、残された畜舎などが名残をとどめています。現在では公園といっているのですが、6台程度の駐車場と公衆トイレがある程度で、定期的に草刈りをする意外何もしない不思議な空間になっています。ただここは冬になると、近所に立派なスキー場があるのに子供連れが現れ、スキーやそり遊びを楽しんでいます。でもほかのシーズンは利用客のいない不思議空間です。とてもいい場所なんですが。
なんですかフライブルグの例を聞くと、いつも一本筋が通っているとうらやましくなります。リーゼルフェルトの例なんか現在から見ればかなり最先端なのではないでしょうか。
公共のために考え、あるものを有効利用しつつ変化に対応する、当たり前なようですが、なかなかできません。特に絶滅しそうな家畜の保護は、本当にできることではないのですよ。すごく効率の悪い仕事ですから。
Commented by うお at 2010-06-22 07:07 x
Taruさん
ムンデンホフの年間訪問者数年間10万人の一日平均が270人は少ないですね。私は大抵早朝か夕方に行きますが、餌やりの職員やねぐらに帰る鳥の大群にしか会わない時もあるます。
多摩動物公園はもっと広いですね。トキもそこにいるようですが、アカデミックな目的以上にその種を残したいと、研究者の情熱があるのかと思います。

ある種の家畜が少なくなっているのは、掛け合わせで、利用しやすい性格の動物を作っていった結果、繁殖力の低下があるようです。それから天然トキの絶滅に関係するかもしれませんが、環境の影響もあるようです。

口蹄疫は大変な騒ぎだったのですね。宮崎で90年振りの発生と聞きましたが、こちらでは数年前の狂牛病もやはり100年単位で、大流行するという厄介な伝染病です。この話からムンデンホフやその他の動物園では、病気対策も大変な仕事なのだろうと想像しました。人と動物と自然の関係が危険をはらんで報道される世の中だから、その関係が平和に見える場所は救いかもしれませんね。
Commented by うお at 2010-06-22 07:47 x
M野さん
山でも土地でもこちらは公有が多いのは何故かなとか、下水処理のために当時市が約500ヘクタールの土地を用意しているとか、この話の中でも、公的な土地利用の仕方が興味深くなります。

不思議な空間が市営で残されているとは、盛岡も不思議な町ですね。フライブルク近郊の陶芸美術館の中庭は生垣で周りから切り離されているというだけで、ひっそりとした草むらだったのですが、隣の銀行が買い取ってまっさらにしました。不思議な空間がなくなると周囲の建物の赴きも変わってしまいますね。

日本やドイツのほかの例を調べていません。が、リーゼルフェルトが宅地用に売れない事情はあったとしても、市有地として展開の仕方にある一筋の考えは、長年住んでいて気付くような地味なもので、だから重要なのかと。環境政策と叫ばれるなかでは、あまり省みられないかもしれませんね。環境政策の根本を、その土地で生まれ育った人が受け継ぐものだと考えているようです。

バッファローが何故ここに?と思ったのですが、この動物も一時居なくなりそうだったのですね。今年2頭の子供を確認しました。
Commented by 寛太 at 2010-06-22 08:26 x
お客さんに届ける作品を取りに伺って なんと2日も散歩する羽目になってしまいました 一日だけあっしの体調がいまいちだったので健康回復のためと歩いたのですが 魚さんカメラ忘れて次の日も、、、
M野さん 計算あってますよ  地図の右下に入り口があります 左上のトイレまで約45分 3KMぐらいでしょうか 帰りは右の方を回ってやっぱり45分合計5, 6KM 歩きます これがなんとも丁度いい感じなんです まさか計算して作ってるんじゃないでしょうが 30分でついたんじゃちょっと近い 1時間じゃちょっと遠い 適度なアップダウンもあって絶妙です
小堀遠州も 顔負け  なんたって 元気が出る公園 なんです 
Commented by 寛太 その2 at 2010-06-22 08:29 x
そういえば昔勤めた設計事務所の所長が 昔の帝国ホテルのラウンジが好きで学生のころ毎日のように通ったんだって 彼が言うに 
座ってるだけで元気が出るんだ! 
そんな空間を君たちも作ってみたまえ!!! って飲むと口癖のようにいってたっけ
ゆったりとした中にも時の流れを感じさせてくれる空間 
過去や未来を想像させてくれる空間
そんな空間作りに憧れを感じてたんだけど80年代の日本はは違ってた、、、なんて愚痴っても始まらん
動物たちも元気そう 仕事してる人たちも ジョギングしてるおっさんも
みーんな元気そうでした 
家に帰って思ったね そうだ 元気の出る器 作ってやる!!てね
住民主体の環境作り 上からのお仕着せでなく 住民が本当に望むことを時間を掛けて模索し作り上げていく ドイツ人ですなー 
素直にいいとこはみとめましょう!!!
Commented by 河西文彦 at 2010-06-22 18:57 x
小学校4年生の夏 1年から3年まで担任であった,木角先生をたづねて、小諸に行きました、迎えてくれた先生が連れて行ってくれた「懐古園」には小さな小さな動物園があり始めてペンギンを見ました。そこには孔雀が居たのですが、先生いわく、「孔雀は12時正午になると羽を広げるんだよ」 それを成人式くらいまで 信じていました。ベルリンには孔雀島ファウインゼルが有り  しょっちゅう  羽を広げています。
Commented by M野 at 2010-06-22 21:42 x
ブタらしい動物が気になる…。
ムンデンホフ単体だと、1900m×200mでしょうか。大体一周すると3キロをこえますね。全体の規模では、この10倍。寛太さん、本気でこのシステムを一周すると8㎞。高低差も考えれば10キロ以上でしょう。でもそこまでがんばって歩いても、おなかの肉は50g程度しか消費されないのが、悲しいです。
さて子鹿牧場(実は読み方は、おかぼくじょう、です)についてなのですが、20年前にわが盛岡市に動物園が出来ました。これに反対運動があったのです。少なくとも作るなら北国にあわせた動物の収集と保護を考えるべきだ。今から見れば当たり前の見地なのですが、それを市が受け入れたのです。所が気がつけばライオンやキリンがいる動物園になってしまいました。なおこの動物園は冬期閉鎖です。
これもあるので、この話は私にとって重いです。
実は子鹿牧場は、フライブルグに近い考え方で設置されているのです。郊外を作る前に中間に自然保護区と図書館や屋外プールなどの施設をそれぞれ配置したものなのです。これは結果そうなったのですが、時間が経つにつれなし崩しにその理念が失われていったのです。比べると、ウーンです。
Commented by うお at 2010-06-23 06:20 x
寛太さん
元気の出るコメントありがとうございます。
このところ体調が気になりながらも、動くことを選択する寛他さんを見ているだけでも、周りは元気になるかもしれませんよ。

歩いていると、「こんな素敵な住まいに入れていいわね」と動物たちがうらやましくなる演出は一体どのようにまとめられたのでしょうね。庭園局が主体だとしたら小堀遠州と並べていただいても決して褒めすぎではないかも知れません。フライブルク市では森林局とか庭園局がとにかく楽しそうに元気に仕事しています。
Commented by うお at 2010-06-23 06:26 x
河西さん
3年間受け持たれた先生を懐かしんでやって来た生徒を連れて、懐古園にいく!木角先生なかなか演出家ですね。それに子供達から絶大な信頼を得ていたことも。孔雀を見るたびに先生を思い出し、時計を見るたびに孔雀を思い出す。そんな思い出大事ですね。・・・・「うおと聞くと山姥を思い出す」許さん!!
Commented by うお at 2010-06-23 07:14 x
M野さん
ブタちゃんはハンガリーの野ブタです。冬は泥んこの中を転げまわって遊んでいる、その汚らしさが・・人気かな。ハンガリーの草原で野ブタと共存しているという羊も居ますが日本名がわかりません。想像の動物一角獣のようなねじれた角を2本もっています。

子鹿牧場はそのような中に取り残された不思議さだったのですね。ほんとうはそこがポイントになるはずだった・・・うーん、と私も思わず唸ってしまいます。市民の声を市が受け入れたという経緯、同じようでフライブルクの違う部分があります。市民の声=助成の力でもあったこと。こうして欲しいではなくて、こうしたい!ということを市長が許したという形になっているのです。M野さんのコメントから、気がつきました。
Commented by 河西文彦 at 2010-06-23 12:26 x
市民の声を聞く 行政、それにつけても 国内での たとえば 諫早湾干拓
はどんな経緯で始まり、今開門 漁民と農民の争い???昔 田んぼに入れる水を取り合って 死人まで出たという 争いを思い出させるような
農民と漁民の争い。岡目八目 のはずが 此方に居ては 理解不能です。
Commented by tomato at 2010-06-23 21:51 x
いやあ、こんな環境が10分のところにあるんですか。
いいですねえ。
なんか思想がいいですね。日本ではなかなかこうはいかないなあ。
でも、ドイツにはいないミーアカットなんかもいて、
これで無料なのはすごいなあ。
環境都市、いい言葉ですね。
日本でも、広告看板を失くして「環境都市」なるものを標榜して
たくさんの観光客に来てもらう都市が
ひとつくらいあってもいいんだけどなあ・・・・
Commented by M野 at 2010-06-23 23:44 x
tomatoさん、ぜひ盛岡に移住を。近い環境は保証します。仕事無い、健康保険税高い、地方税もなんかおかしい、これさえ我慢できれば、確かに環境都市ですよ。動物公園もあるので、動物充実。その前に夜にタヌキやキツネの親子にすれ違うことも頻繁。観光都市宣言もしています。無意味な観光施設も充実しています。是非!
もう自虐します。
Commented by うお at 2010-06-24 03:34 x
おー河西さん
この勢いのある表現好きです。何でしょうね?人が何かを理解するときに、かなり自己のテンパラメントに左右されるのでしょうか。しかし諫早湾干拓に関しては全く無知です。
土地利用に関係したことかと、ちょっとニュースを拾ってみました。自然条件を克服しようと元禄時代から始まった対策。それが現代の環境問題からみでご破算になるかもしれないという側面を持つということでしょうか。勉強になりました。
Commented by うお at 2010-06-24 04:04 x
Tomatoさん
私にとってのここは、Tomatoさんの善福寺公園に匹敵するかな(笑)ここを訪れる人々はその成り立ちを正確に知っているわけではないでしょう。ただ私が感じたようにそれが自然に見えてくるのです。
あのミーアキャット君(ちゃん)の頭上には電灯があって、独り占めにして温まっているところです。アフリカグループではなく「変わり者」の仲間としてカテゴリー分けされていたのは、女性が主導権を握るから。
こちらから見ると日本の看板がむしろエキゾチックに感じられるようです。本当は観光地ではない場所、小さな駅にひょっこり降りてみたり・・・なんてあこがれるようですが、最大のネックは言葉です。

Commented by うお at 2010-06-24 04:09 x
M野さん、Tomatoさん
あー言ってますが、私は盛岡っていい町だと思うのですが。
えーとワンコ蕎麦!これ是非Tomatoレパートリーに、それからM野さんとすれ違うっていうのが醍醐味ですね。
by kokouozumi | 2010-06-19 04:04 | Comments(17)

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by kokouozumi