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庭園

不思議な・・・
立体的な・・・
庭を見ました。








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この風景まで来ると、庭園の立体感が判ってもらえそうですね。
水色の木戸が地上階でその上、2階、3階にしつらえた庭でした。
昨今の環境テーマの中では、都市の中の緑化制作で、ビルの屋上に庭が作られたり
地上スペースでも、地下が駐車場で本当はコンクリートで覆われた部分に土盛りして
庭の園芸が楽しめるようになっていたり
最近の建築物は周辺の緑化までデザインされるようになりましたが

これはむしろ宙に浮いた、空中庭園を連想させました。




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(バビロンの空中庭園)写真出典Wikipedia




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ところが、木戸から飛び出してのびるこの樹木の幹を見ていたら、「何故」と思い始めました。

そもそもこの家には地上階平面に庭となる場所が無かったのだろうか?
この木(何の木かわからない)は上方にもどんどん成長していき、3階のベランダの一角をも埋め、その周りに他の植物が配置されて、まるで家の表面を隠しているようです。後から写真を眺めたら、樹木を這わせる心棒以外に何本かのパイプが走っているようです。ドイツの家は冷たい外気を避けて、水道管が外にむき出しになっていることは殆ど無いので、これは上階の植物に水を撒いたり、あるいは排水に使うのかな?

この家はフライブルク近郊の小さな町に有りました。とはいえ街中を走る大通りに面していました。表から石造りのアーチをくぐって中庭にこの水色の木戸があり、大抵なら・・普通は・・・その中庭平面に配置されるだろう植物が立体的に造園されています。

この立体庭園をプランし実行したのは、この町の園芸局に勤めるプロフェッショナルな造園家の弟であると、私が訪ねた陶芸家の女性、その家の1階に工房を持つ方から聞きました。この家で陶芸と造園は違う人間がそれぞれ担当していますが、その二つの言葉から連想したのは、「もしかしたらパリシーか?」

パリシー(ベルナール・パリシー 1510~1590)はフランス・ルネッサンス時代の陶工ということになっていますが、始まりはガラス職人、晩年は地質、鉱物学、博物学の講座を受け持つなど幅広い経歴が伝えられています。最近イタリア・ルネッサンスに関する本で知ったのですが、ダビンチやミケランジェロなどその頃の芸術家が幅広い活動をなしえたのは、当時の工房というものが今と違って専門職に分かれていなかったため、見習い職人は、絵の具の混ぜ方から火焚きまで幅広く手伝いに走り回った背景があるらしい。時代感覚としてフランスも同じようであったのか?それにしても当時親方になるような逸材は、膨大な情報は得られるけれど、実践の機会が乏しい、現代人にとって驚異的に多様な知識と経験を身につけていたのだと思います。

このパリシーという人物は、明治時代に中村正直の『西国立志編』で300人の中の一人として日本に伝えられています。この立志編は教科書にも載ったということで、パリシーが磁器制作に苦労した話は、日本の陶工の苦労話に転用されたとも言われています。
最近『ハザン』というドラマを観た際、貧しい波山が十分な薪を用意できなかったのか、温度達成を願うあまり、そこら中の雨戸や建具を燃やし始めるシーンがあり「あっ、パリシーだ」と思いましたが、古今東西何かに情熱的に向う人々は、同じようなことを考えるようです。

ところで私がパリシーを知ったのは『陶工パリシーのルネサンス博物問答』という本によってです。1563年、パリシー本人の書いたものが1993年、日本語に訳され出版されています。勿論陶工しかもルネサンスの、というタイトルに飛びついた私でした。開いてみたら、弟子が質問し、パリシーが答えている内容は造園に関するものです、ルネサンスの陶工がどうやって轆轤をひいていたの?など、そんなことしか発想しなかった、非常に陶芸オンリーの私の興味から外れて、正直な話、買った当初はじっくり読んではいませんでした。その後ひょんなことで、又開いてみたのは、このブログ書き込みの中で「塩釉の発祥は・・?」というテーマを、みんなであれこれ話していた頃です。農業指導の話の中でパリシーは塩が大事とし、ガラスでも陶器製造でも塩が必要不可欠と語っています。

しかしその部分を今は素通りして、造園なのです。幅広い活動といってもガラス・陶器・園芸は鉱物や土つながりで関連性が無いわけではありません。しかしパリシーの造園プランを読んでいると、思いがけないところに、陶芸家の顔が覗きます。たとえば庭園に配置する園亭(あずまや)について、建物は外から見ると岩にみえるようにすべきとか、樹木で周りを蔽ってしまうとか、屋根にも植物を植えるとか・・・はまだしも、『内部の艶の美しさについて語りたい!』と続きます。彼はそのために園亭(あずまや)内の丸天井から裾の敷石に至るまで、様々な釉薬を塗りこめ、火を焚いて溶かしてしまうとプランするのです。これには「おっ、おー」とびっくりです。思いがけないところにルネサンスの陶工を見つけてしまいます。さらに内部には本物と陶製のトカゲや爬虫類を配置したいそうだ・・・むむ。

このように何度か思い出し覗くうちに、塩と陶芸の関係、ガラスや陶芸から農業や造園にいたるまで、パリシーが経験に基づく知識を語るところに、実はルネサンスという時代感覚が潜んでいるのではないかと、最近やっと私のほうに、この本の意味に似合った興味が、用意されてきたかもしれません。

ところで見つけた立体庭園、その植物が覆う内部の部屋では陶芸家のお姉さんが、ガス窯を焚いています。一瞥した限り、爬虫類は焼いていなかったと思います。今度機会があったら、この庭園をプランするに当たって何かたたき台というのか、お手本があったのか聞いていたいと思います。




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この家の通りに面したファッサード。
Commented by 河西文彦 at 2009-10-06 12:04 x
わっすげー! 一度訪問してみたいです、でもその陰の声で「住むのには、手入れが大変そう!」 昔アメリカの SF映画に みどりの植物に侵略されるのがあったけれど、自然には やっぱり人間は勝てない!自然をコントロールしようなんて   ね!
Commented by seedsbook at 2009-10-06 15:20 x
すごいですね!時々屋根を突き抜ける木などを見かけますけれど。。この木戸を突き抜けている藤はかなり古そうですね。植物の組み合わせなど見るとかなり、センスの良い方なのだろうと想像できます。さすがプロですね。ルネッサンスの職人の守備範囲の広さの原因も、パリシーの話し面白く拝読しました、パリシーが園亭に釉薬をかけて焼いてしまえというのを読んで、ぜんぜん違うことですが、Peter ZumtorのEifelに立てたチャペルが思い起こされました。いずれもそのダイナミックな発送が面白いと思います。
私の住んでいるところは集合住宅ですが複雑な形で、テラスは下の店舗の屋根です。39平米のテラスですが、それが数件横に並んでいる状態です。そして避難通路は砂利が敷かれていますが今ではさまざまな植物が自然に生えてまる野原になってしまいました。(と説明しても、よくわからないですね?)いづれにせよ、植物はしたたかです。
Commented by M野 at 2009-10-06 17:29 x
もしかすると、この木フジではないでしょうか。葉っぱと実らしきものがうつり込んでいます。そうすると様々なことが見えてきます。
はじめ玄関先に植えて楽しんでいたらどんどん大きくなり、誘引したり棚を作ったりしてたんだけど、それでも間に合わなくなり家の壁面を直したり、フジの成長にあわせて様々なことをやった名残りがいっぱいあるのでは。その上空いたスペースにハンギングバスケットを置いたりして現在に至る、なのでしょう。
どっちにしても蔓性の植物が大好きな人ですね。至る所に棚があります。
なおフジは日本原産でドイツでの固有名はないかも知れません。学名の学名のwisteriaで通っていると思います。
いずれフジだとすれば幹の太さから50年以上でしょうか。
もしも私の予想があたっていたら6月に写真をアップして下さい。
見事なはずです。
なにか向いのファサードとトータルコーディネートしているのは、気になりますね。
Commented by tomato at 2009-10-06 22:15 x
私も藤のようなツル性植物の一種かなと思いました。
日本のヤマフジはかけ上がれるものがあれば、
どんどん上にあがっていきますから、
これも家を伝って大きくなったのでしょうね。
藤の葉の間にいろいろな植物を置いて、
全体としては空中庭園のようになっているのかな。
いずれにしても見事ですね。
一度なかに入らせていただきたいものです・・・・
Commented by うお at 2009-10-07 05:52 x
河西さん そちらは寒くなってきましたか?フライブルクの今日は生暖かでした。
ほんと、庭に植えた種は芽が出なかったり、水をやらないと枯れたりするのに、雑草はたちまち庭にはびこる。樹木も確実に大きくなっていて、今年、私の部屋が妙に暗くなったと思ったら、イチジクの木から枝がどんどん伸びて、葉っぱが私の部屋をほぼ蔽っているのよね。

庭仕事や植物の観察は自然を知る機会ですね。
Commented by うお at 2009-10-07 06:37 x
Seedsbookさん こんばんは
みなさんから藤だって!教えていただきました。知らないのは私だけか、(爆笑)。それにしてもプロのやり方は、野性味が感じられて違うものですね。クリエーティヴな仕事の行き着くところをパリシーは伝えたかったのかと、この庭をみて思いました。
Peter Zumtorという建築家は残念ながら知らないのですが、Eifelで別な反応をするとEifel推理小説というのがあるそうですね。ダイナミックが似合う土地のようですが・・・。Seesbookさんのお住まいの構造はつかめませんが、砂利の植えに進入してきた植物達はブログに登場しているようですが、可愛い侵入者ですね。
Commented by うお at 2009-10-07 07:01 x
M野さん、お早うございます。
藤棚にないと藤とわからないのが私です。ドイツ語でWisteriaの他にGlzyinieというのが有りました。Wisteriaがラテン語で、日本原産だとすると、Glzyinieは一体何語で何故この名前で呼ばれるのでしょうね?

50年・・園芸家の弟さんは何歳だろう?藤の生長にあわせて、藤の枝が走っている2階、3階テラスは彼が藤守りをしながら、園芸道具の物置や設計室として建て増しされていたら、面白いですね。説明がわかりにくかったかな。最後のファッサードはこの家の正面です。木戸はその奥にあったのです。

わっ、6月に撮影命令ですね。う~~ん、写真家からのこの指令はプレッシャーですね。でも楽しみです。いつ咲くか聞いておきましょう。
Commented by うお at 2009-10-07 07:26 x
Tomatoさん、おはようございます。
え~~、藤さえ気が付かないのに、さらに駆け上っていく山藤が出てきて、もう目を白黒です。確かに藤棚何処までもつたい昇っていく性質を利用して、考案された鑑賞方法なのですね。藤は剪定が難しくて、間違うと花が咲かなくなると・・・聞いたような。この家の藤はプロが面倒を見てるから、きっと咲くと思いますが。

そう初めに空中庭園と感じたのは、周りに配置された植物が自然で、まるで地面が吊り上げられたように見えたからです。私もこの家の中に入り込み2階、3階と蔦と一緒につたってみたいです。

Commented by seedsbook at 2009-10-07 15:02 x
Peter ZumtorのFeldkapelleアイフェルの件でもう一度。Feldkapelleで検索すると写真が出てきますが、私も去年訪ねて、その時のことをブログにも書いています。
2008年9月5日の記事です。お暇なときに読んで見てください。
ただ、牧師の友人があれでは瞑想するのに少し具合が良くない。。。といっていましたが。。。笑。 
EifelにKrimi-Wanderwegというのがあるそうですよ。結構Eifel-kirimiのファンはいます。知っている土地や名前が出てくると臨場感一杯です。実は今週末友人の公開アトリエでアイフェルに行きます。このZumtorのチャペルの近くです。
そうそう、藤ですがBlauregenという名前もありますね。長い房の垂れる花の名を雨とかけるのは他にもGoldregenがありますが、沢山咲いているとまさにその名付け親の気持ちがわかります。
我が家にも10年ほどの藤が植わっています。悪環境も毎年花が咲き、良い香りを放っています。WisteriaはどうやらWistarという医者の名前から来ているらしいのですがGlyzinienは語源は何でしょうね?
Commented by うお at 2009-10-08 06:55 x
seedsbook さん、インフォメーションありがとう。ブログの内容と写真から建築家Peter ZumtorがEifelに作った教会のことがよくわかりました。この建築家も内部を焼いてしまったのですね。焼けた黒い木肌にぽつぽつあいている穴から、外光が☆のように見えるのでしょう。
パリシーのプランでは溶けた釉薬がレンガをつなぐ漆喰の目地に流れ込み、艶を帯びることになるはずでした。この計画が実現する前に、パリシーはバスティーユの牢獄で死んでしまいます。

私の知り合いの陶芸家がEifelに住んでいるのですが、暇だから図書館に通って、Eifel-Krimiを次々読み(私は読んでないので推理としましたが犯罪史としたほうがいいのかな)そのうち『何故中世に陶工が町人から嫌われたか』に関する論文を自ら書いてしまいました。

Blauregen(青い雨)はなるほどです。このような名前は近所の人と世間話をしながら、ふと耳にするのでしょう。今度Kleingartenに行くときは、メモ帳を持って行かなくちゃ(笑)それにしてもSeedsbookさんは植物詳しいですね。
by kokouozumi | 2009-10-04 05:51 | Comments(10)

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