さよなら・・・読書室













工房の隣家が空いて、これから2週間後、そこへ引っ越すことになりました。
これまで住んできた、どの住居とも違った生活感覚をもたらすだろうその家については、後日引っ越してからメモすることにして・・・

今は残り少なくなった電車通勤の日々をいとおしんでいます。
もうこの冬からは、寒風の吹き込むホームで乗り換えの電車を待つこともなくなるのですが、電車に乗り込んだ瞬間、あの車内の暖かさにほっとする気分もなくなるわけです。
1つの習慣、一日のリズムとして消費していた通勤時間のネガティブ要素を度外視して忘れがたいのは、やはり電車の中が読書室だったからでしょう。

しかし、電車の中で読書することは、結局家に帰り着いてからも続きを読みたくて、夜中の2時、3時まで読書は続く!現象をもたらしたことも白状しておきます。電車通勤のおかげでよく読書したこの2年間でした。既に報告したように、長い間書架で眠っていた本を引っ張り出したこともありましたが、電車の中でも楽に読めるものとして、手当たり次第に読んだのは、推理小説の類。これが曲者で家に帰ってからも尾を引いた原因はこれです。伊阪幸太郎や東野圭吾を推理小説として分類してよいのかどうかはともかく、夜中までの読書で目を真っ赤にさせた犯人は彼らの作品。さらに原作に留まらず、ユーチューブで映画化されたものを探し・・・という状況に至ったので。翻訳作品ではなんと言ってもジェフリー・アーチャー。Stuttgartでは日本人同士が本を交換し合う、古本バザーがよく開かれるので、昔読んだものでもジェフリー・アーチャーを見つければすかさず手に入れて、読み返しました。バザーにはなぜかケン・フォレットが登場せず、ドイツ語のものに手を出そうかと何度か書店で物色したのですが、日本の文庫本のように、上・中・下と分冊されることがなく、分厚い1冊を目にして恐れをなし、ケン・フォレット三昧は実現しませんでした。

電車の中で心地よく本が読める座席を確保する・・・というノウハウも次第に覚えたものです。単純ですが、本を読んでいる人のいるボックスに座るというものです。2人までが本を読んでいるボックスに、携帯で喋りまくる人が新たに加わる確立は少ない。4シートのボックスに一人座っていると、3人のおしゃべりさんたちに囲まれてしまったこともしばしばありました。

動く読書室での時間も残り少なくなって、さて記念の最後の1冊はと、思っていたら、やっぱり猫の本が飛び込んできました。日本でもかなり話題になっている、ロンドンのボブの本です。ジェームス・ボーウェンの『野良猫ボブ』がイギリスで出版されると
すぐ、ドイツでも英語版が書店のベストセラーコーナーに積まれましたが、そのうちドイツ語訳も出てくるさ!と気長に待っていたそのドイツ語版を、最近ついに発見。「私の人生を変えた」というボブ猫の話は面白すぎて、あっという間に読んでしまい、通勤日数がまだ残っている始末。英語版では既に続編も出ていますが、そのドイツ語版が出るまでは、少なくとも半年待つことになりそう。まもなく日本語版も出版されるらしいので、あまり本文内容に触れたくはないのですが、ストリートミュージシャンと一緒に、路上に座るボブは猫なのですが、信じられないくらいじっとその場に居続ける。つい人間はいろいろと疑り深い考えが浮かんでくる。「車の往来激しい路上の片隅に座り続けているなんて、耳が聞こえないとか・・何かの神経が欠落しているのではないか。」「いやエジプト猫という血統種は何事にも動じないらしい。」「ボブの振る舞いは、そのような高貴な血が表出してなのか?」などなど下世話な考えに対し、ジェームス・ボーウェン氏あるいは、彼の出版エージャントは最後に哲学的な解説を用意している。私の残された通勤読書時間は、この類まれなボブの話を読み返すことになるでしょう。






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S-バーンの車内風景、




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by kokouozumi | 2013-10-03 05:58 | | Comments(6)
Commented by tomato at 2013-10-03 08:57 x
仰るとおりです。
単身赴任中だった仙台では
事務所へは歩いて15分の距離。
その4年間の読書量はかなり減りました。
自宅に戻り、
満員電車に揺られる50分間ができただけで
読書量は3倍ぐらいになりました。
 
家は読書する環境にないとは言いませんが
通勤を無駄に使いたくないという思いがそうさせているのかもしれません。
定年後はどうなる?(笑)・・・・
Commented by うお at 2013-10-04 05:19 x
Tomatoさん、こんばんは。
50分の通勤時間ですか。かなり集中して読めそうですね。座れない時もあるのかしら。その時は大変ですね。
私は活字依存症というのか、字さえ追っていればいくらでも時間をつぶせるタイプです。ですから手当たり次第に読んでいたのですが、これまであまり好まなかったストーリーに引きずられるという経験が楽しかったです。

Tomatoさんの定年後は確か陶芸ですよね。窯焚きしながら読書・・いいですね。窯炊きも佳境に入ると数分ごとに薪くべするので、忙しくなりますが。(爆笑)

以前Tomatoさん紹介のゴールデンスランバーも、私の移動読書室に華をそえました。
Commented by M野 at 2013-10-04 12:50 x
最近老眼が進んで、読書が辛いです。
私も活字中毒なのですが、文字の拡大が簡単なネットに移行しています。
Commented by うお at 2013-10-05 05:38 x
M野さん、こんばんは。

私もですよ。仕事は(私の場合)見えなくてもできるのに、読書となるとつらいですね。しかし最近の文庫本は字の大きさや色、行間のとりかたなどに工夫があって、読みやすくなりましたね。老眼世代の読者を失ったら、出版業界は困ったことになるのかな?


・・・と思っていたらキンドルで読書する若者から前を読み返すのが面倒という感想を聞きました。紙の本なら戻って読み返したい文章が大体どの辺にあるのか予想できる。つまりページ数ではなく、本の厚みのどの位置かで、書かれている内容を覚えている・・・というのです。電子書籍にはその感覚を反映できないから、読みづらいということでした。

何かしらの資料を私もネットで探しますが、じっくり読みたいものが見つかったら、結局プリントアウトしています。M野さんはスクリーンで詠み続けるのでしょうか?


Commented by M野 at 2013-10-05 18:23 x
インク代がもったいない…。
ただ統計資料は別ですね。これは紙で見て鉛筆で書き込んでとかが必要。
後はコピーアンドペーストで、ワープロソフトに落として保管でしょうか。ついでに文字を大きくしたりして。

例外中の例外ですが、詩は本でないとマズイときが有ります。賢治の詩なんて引用が多い分、打ち込み間違いや改行間違いが散見されます。どれが正しいのかは、やはり更正者のいる本に限ります。
Commented by うお at 2013-10-06 06:12 x
M野さん
すべて通勤時間の罪では無いのですが、家で読み時間がまったく少ないこの頃です。プリントして電車の中で読むこともしばしばありました。
インク代節約のために、私も必要部分のみコピーアンドペーストです。(笑)

電子書籍になれるかどうかの読者側の話以前に、制作過程の話があるのですね。安心して本を読むということは、なかなか奥が深いのですね。かつては翻訳という問題がありましたが、考えれば考えるほど、SF的世界になっていきます。テレパシー力を内蔵しなければ正確に読めないかもしれない・・・


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