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人々と経済 2



もっと、素早く続編をアップする予定でしたが
急な日本への帰国が、間に入ってしまいました。
成田空港で帰路のフライトを待つ間、待合室のTVチャンネルを誰かが国会中継に合わせ、それをぼんやり眺めていたのですが、若い議員が「次の世代に何が残せるかを考えた・・・政策」というような発言をしていました。今、世界中で問われているテーマです。


私はだいぶよれよれになってしまった、この新聞記事と訳をメモしたノートを取り出して、日本滞在中のことと、頭の中の切り替えを始めました。





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「午前9時、ホワイトハーヴェンの市役所会議室にて市長に会う。社会民主労働党員であるその人は10年間市長を勤めているベテランの地方政治家である。ダイエットコーラを机に置き、マールボロを喫煙する彼女の鼻にはピアスが光り、両手首に刺青がみえる。
『この町の就労者に対する約半数の職場がセラフィールドにある。もし5年以内にその再処理施設が閉業するとしたら、取り片づけ仕事に千の職場が継続すると思うが、他の数千の仕事が消滅することになる。原子力再処理の終わりによって、この町の職場市場破壊が懸念される。』

しかし市長は、核ルネッサンスという一塁の望みを持っている。ドイツが原子力に背を向けている今、イギリスは野心的にヨーロッパ中の原子炉撤去プログラムを考えている。
イギリスでは、18年前から原子力発電所の新設は行われていないが、8箇所の既存発電所は、5年以内に新しい原子炉が設置されなければならないだろう。その中の一箇所がセラフィールドだが、はっきりした建設計画はまだ出されていない。

インターナショナル・エネルギーコンツェルンがこの新原子炉に投資する予定だったが、イギリス政府との交渉(長期補償の生産電力、最低買取価格に関する)が続けられている。既にドイツの電力会社2社が、この核新プランと決別する意向であり、フランス・スペイン(コンソーシアム)からの融資が可能性として残されている。

市長はこのような原発依存による町の存続を、望んでいるわけではないのだが、他に方法がない。そもそもホワイトハーヴェンのような、セラフィールド近辺の住民たちに、自分たちの里が核産業の中心地となるべきかどうかというような質問すらなかった話だ。政府は第二次大戦後、核施設を簡単にこの町のそばへ建設したが、当時ロンドンに居た大臣たちの半数はSellafieldがどこにあるのかすら、わかっていなかったと思う。

経済危機に直面したイギリス政府は、何世代にも渡って国中の地方自治体の予算切り詰め政策を行ってきた。この町でも多くの支出がカットされ、郷土博物館を自前で維持することも出来ず、セラフィールド敷地内に間借りしている。町の文化行事も核産業からの寄付金なしには不可能な事情がある。」

原子力施設の事後処理をおこなうNDA経営者の話。
「国は節約を続けているが、我々はさらに巨額の資金を必要としている。昨年度だけでもイギリス政府はセラフィールドに19億ユーロを支出している。この手間のかかる原子力廃墟の廃棄物処理に国家金庫は一世紀以上の負荷を見通している。イギリス会計検査院の最新見積では、3年前のデータより250億ユーロ多い、800億ユーロを計上した。
セラフィールドも現在、国の経費削減の対象となっている。我々は、どの仕事がこの場所で急がれるか、どの仕事は待つべきかを判断していかなければならない。」

この記事は、原発反対運動者とのインタヴューで締めくくられている
「70歳になったばかりのその人に会うには、迷路のように途中で道が消滅するような道なき道を進まなければならないが、サテライトナビ装着の車でセラフィールドから約1時間でたどり着いた。彼とその奥さんはセラフィールドの町に住んでいたが、原発反対運動者はその町にとって、部外者だった。誰かが知らぬ間に、彼の車の車輪ボトルをはずしてしまったり・・・というようなことが相次ぎ、20年前町、原野の中の農家に引きこもった。彼の率いる反対運動グループには、25年前の運動が盛んだった頃には数千人のメンバーが居たが、徐々にその人数は減って、現在は200人ほど。福島の後にもその数に変化はなかった。しかし彼は本と紙に埋もれた小さな書斎に座りインターネットを使った調査や、報告書作成に携わっている。週に三回、運動メンバーはセラフィールド反対キャンペーンを行っているが、時には一人で孤独な活動になることもある。セラフィールドは近辺住民に対する、年に数回の説明会を設けているが、その際に批判的質問を発するのも、殆ど彼一人の役割として定着しており、質疑応答が始まると、頼みもしないのに、マイクが廻ってくる。

報われない仕事に対するフラストレーションが起こらないのだろうかと聞いてみた。
彼は、多くの人々にとって報酬を与える場所に対峙するところに立っているのだから、それは当然の成り行きと見ている。しかし極わずかでも反応があることのほうが大事だと捉えている。反対される側からも、彼の専門知識は評価されている。彼はセラフィールドの施設閉鎖が正式に公示されるまで運動を続けるつもりだ。

彼はある逸話を付け加えた。
数年前、セラフィールドに原発新設の計画がもたらされた時、住民たちは反対した。
しかし彼らがなぜ反対したかというと、『新しい冷却塔が、海に沈む夕日の景色にとって邪魔になる』からだった。」
Commented at 2013-04-16 01:37
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by kokouozumi at 2013-04-16 05:49
Tさん
ありがとう。お互い元気で仕事しましょう。
by kokouozumi | 2013-04-15 08:12 | 人々 | Comments(2)

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by kokouozumi