サーカス

工房に近い草地にサーカス小屋(テント)が突然出現し、2週間後にまた居なくなった。開演16時という時間帯にそのあたりを通っていないので、どれくらいの訪問客があったのかわからない。午前中に通ったら、サーカスで出演しているらしい、ラクダや馬が草地でたむろしている場面を見た。もともと草地には囲いがないし、サーカス団も特別に囲いの設置はしなかったから、まったくの放し飼い状態で、動物たちの逃げる心配は皆無のようだった。一度小型バッファローのような牛が草地から道路に出ようとしたら、サーカス団の人が『おいおい』という感じで、追い払った。その人はたまたま住居としているキャンピングカーから出てきたところだったが、たまたま出てこなかったら、どうなっていたのだろう?



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夜になるとテントの上を青い電飾が走り、サーカスが来ているよと宣伝していたが、一群のキャンピングカーはどれもひっそりと暗闇の中に並び、大型荷物車のなかにしまいこまれたらしい動物たちの気配もなかった。

ひっそりとやってきて、ひっそりと去っていったサーカス団だったが、テントがなくなってしまうと、その場の風景はなんだかものたりなく感じられる。実際に見物したわけでもないのに、サーカスに付きまとう独特のイメージが、その場に寂寥感としてむしろ残ってしまうように。

私は子供の頃一度だけ、家族一緒にサーカスを見に行った。グリコキャラメルの空き箱を持っていくと、入場料が割引になるということで、途中大人たちは何箱ものキャラメルを買った。箱から取り出されたキャラメルが見物の間、飽きるほどのおやつになった。サーカスポスターといえば定番の、象やライオンが登場したのかどうかは覚えていない。バイクが球形の鉄枠のなかで爆音と共にぐるぐる廻っていたことや、空中ブランコ、それに賢いワンちゃんが紙に書かれた数字をくわえて、算数に回答していたのを覚えている。そのワンちゃんが出番の後、客席の下をうろうろしていたのが、サーカスの印象として長い間留っていた。コロセウムのように舞台を取り囲んでいる客席の後方部分は下の地面までかなりの距離があった。上の舞台を囲む世界と、その下、客席から落とされたごみが散らばる世界の差異を、ワンちゃんがうろついたことで見てしまったように思う。グリコキャラメルを一粒落として見ようかどうか、舞台見物そっちのけで、しばらく迷っていた。結局落さなかったが。

ヨーロッパ中には600のサーカス団が数えられるらしい。実際の舞台を見に行ったことはないが、テレビではサーカス公演の番組に偶然チャンネルを合わせて、見たことがある。そこから伝わるサーカスの様子は輝くエンターティナーの世界。中でもモンテ・カルロでおこなわれるサーカスフェスティバルは、世界中のサーカス演技者がゴールドメダルを狙って、技を競う。

最近ドイツのサーカス・テーマでは、若手猛獣使いのマルティン・レイサー・ジュニアのモンテカルロ・フェスティバル2010年ゴールドメダルが、華やかな話題である。レイサー・ジュニア(35歳)はゴールドメダル以前からフライブルクの地方紙でも取り上げられるほどの人気者なのだが、両親ともに動物の調教師というイギリスの家庭で、ライオンや虎に恐れを感じない育ち方をしたようだ。MGM映画の看板、映画が始まる前にガオーと叫ぶあのライオンは父親が調教している。レイシー一家は、始め二つの動物園を管理していた。しかし19時間も寝ているライオンが起きてもなにもやることがないのは、退屈そうなので芸を仕込むことにした。
14歳で檻の中に入ることを許され、両親の手伝いをしていたので、自分も絶対猛獣使いになると思っていたが、父親は彼をまず暫く動物から離れるよう、寄宿学校に入学させた。もちろん学校を終えると、まっしぐらに檻の前に帰ってきたが、またしても父親から、当分は動物の世話、餌や小屋の掃除のみを担当するよう命じられた。ライオンや虎の傍にいることが、そもそも好きだったから喜んでその仕事を引き受けた。そうして朝起きてから寝るまでずっと、動物と共に過ごした時間が、彼の現在のキャリアに還元され、独特のショースタイルや猛獣たちへのコミュニケーションに役立っている。もし彼のライオンが病気になったら、麻酔なしで自ら注射できる。

マルティン・レイサー・ジュニアは2006年、ドイツ・ミュンヘンのヨーロッパ最大級サーカス、クローネへ彼のライオンたちと共にやってきた。彼のショーは、人間と猛獣両者の間に恐れが介入しないという、彼らが長い年月を一緒に過ごしてきた故のスタイルを浮き彫りにしている。19時間のお昼寝から覚めたら、ちょっとライトと拍手を浴びながら、遊ぼうか!といった調子である。前の場面で言うことを聞かない反抗的態度を演じたライオンが、次の場面ではコマンドの出る前に演技に取り掛かるという、とんまな賢さぶりが、観客の笑いを誘い、ホットな気分で見物できる。

さらにアラビアンナイトのメルヘンのような話も。
モンテカルロでレイシーと彼のライオンたちの演技を見たサウジアラビアの王子が、ミュンヘン・クローネにも追っかけで見物に来た。そして王子の白いライオンをプレゼントしたいということになった。サーカスの白いライオンはクローネだけという宣伝だが木下サーカスは4頭のホワイトライオンを持っているよね。種類が違うのだろうか?
それに手塚治虫がなんと言うか・・・    続く
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by kokouozumi | 2012-11-26 08:40 | 人々 | Comments(5)
Commented by M野 at 2012-11-26 19:22 x
りんご拾い放題…。馬が大喜びしそう。
Commented by うお at 2012-11-27 07:53 x
M野さん
小規模のサーカスが滞在して興行するのにちょうどよさそうな場所です。馬たちは林檎を食べたのかな。
Commented by 河西文彦 at 2012-12-03 15:33 x
シバタサーカス、きぐれサーカス、と言うのが秋から冬の 諏訪湖畔にきていました、刈り入れの後の田んぼ道を 歩いて見に行きました。子共が
サーカスにさらわれる、とかサーカスの芸人は毎日酢を飲んで体を柔らかくするとか、 ジンタ の音とともに 物悲しいイメージです
Commented by 河西文彦 at 2012-12-03 15:37 x
モナコでのサーカスとか 手品の世界選手権とか、今の 華やかな世界も
サーカス の豪華な一面でしょうね、この街にも小さなサーカスと移動動物園が来るのですが 町中で えさ代を集める姿は 物乞いに似て
今の寒さに 似合って困ります。
Commented by うお at 2012-12-04 08:27 x
河西さん
寒くなりましたね。お元気ですか。
サーカスの物悲しいイメージ、よくわかります。ですから私も見に行った時、表の舞台と楽屋裏の彼らの生活を無意識に想像しのだと思います。
しかし子供は無邪気なもので、酢を飲めば体が柔らかくなると発想展開して、酢を飲んで部屋中で暴れまわっていました。

日本では三大サーカスの運命が危ぶまれている中、ヨーロッパではまだ何百ものサーカスが存続していますね。どの町にもどこかのサーカスが、今頃の時期やってくるのですね。どこでも目にするようなサーカス団は小規模なので、最近うるさくなった動物保護云々の規制のもと、必死で状況改善を図っているようです。ヨーロッパでもどれだけのサーカスが生き残れるかの時代になって来ました。
そんなことを考えながら、もう少し続けていきます。宜しく。


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